面談をしている中で、いろいろ聞いていると「先輩からこの参考書がすごく良いと言われたから」「あの先生からこの方法がすごく良いと言われたから」「友達もやっているから」というような話が出てくることがあります。
でも、他人にとって100%合う方法が、自分にとっては全然合っていないということがよくあるのです。
「アドバイスをしてくれる人にとっては真実」であることが、「自分にとって何が正しくて、何が間違っているのか」は別なのです。
世の中は様々な情報が溢れ返っています。
言わば「情報の洪水状態」の中に今の受験生は置かれています。
周囲に惑わされて、自分にとって合っている方法を放棄してしまう、という選択をしてしまいやすいのです。(周りは常に自分以上に良く見えるものです)
何が自分にとって真実なのかという判断の大切さを受験は教えてくれる機会になります。
自分は大学に入る前に一年間浪人をしましたが、現役のときに伸びた成績が浪人のときに思ったように伸びず、非常に苦労したということがありました。
量をこなすことばかりに気を取られて、現役のときのように基礎を重視して繰り返すということを疎かにしていたことが原因でした。
自分にとって何が大切なのか、ということを見失ってしまっていたのです。
今でも覚えているのが、悪戦苦闘しているときに読んだ現代文の入試問題で、評論家の山崎正和が書いた文章です。
「不易」と「流行」に関する文章が出題されていました。
「不易」というのは、どんなに時代が変化しても変わらないことで、「流行」というのはその時々によって変わりゆくものをさします。
山崎正和は、「変化の激しい現代社会においては、自らのアイデンティティを、周辺部分と核心部分に分け、流動的に変えていくことと、絶対に変えてはいけないことを常に考えていかなければならない」と述べています。
この言葉は、現代を生きる人々に重要な示唆を与えてくれるものです。
特に受験生は、周囲に惑わされることが多い存在です。
極端に自信を失ったり、「変わらなければ」という意識にせきたてられて、本当に大切なことが何なのか、ということを見失ってしまうことがあります。
受験勉強をしていると、常に改善を重ねていき、これまでのやり方の何を変えて、何を変えないかという選択に迫られることになります。
世の中には、あまりにもたくさんの価値観があふれている状態です。
いろんな立場でいろんな価値観の人が意見を言うため、いったい何を信じればいいのかがわからなくなってしまいます。
価値観の洪水にあうと、自分がひどく遅れた存在のように見え、「何でもかんでも変えなければ」という意識にせきたてられるようになってしまいます。
そして、変えてはいけない部分に手をつけてしまうことで、大切なものを失ってしまうことになります。
確かに、環境の変化の激しい状況では、常に新しい発想や、新しい方法が求められます。
そのため、いつまでも変わらないでいることも難しいと思います。
ですが、変化の中でもしっかり自分を保っていかないと、あっという間に周囲に流されて主体性を奪われてしまいます。
自分を保っていくためには、自分が変えてはいけないものは何なのかということを考えて、守っていくことも必要です。
山崎正和は日本を代表する評論家ですが、「何でも変えていかなければ」と考えていた浪人生時代の自分は、この文章に救われました。
今でも自分の支えになってくれています。
受験生のときに出会った文章は一生ものですね。
「自分が大切にしなければならないものは何か」
その判断を大切にしていきましょう。