音読の効果を裏づける

トロイア遺跡、ミケーネ遺跡を発見したシュリーマンは言語の習得を得意技としていました。

最終的には生涯で15カ国語を話せるように。語学を身に着けたことが、様々な国と交渉する上で役に立ったと言います。

シュリーマンは著書『古代への情熱』の中で以下のように書いています。

“このかんたんな方法とはまずつぎのことにある。非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日一時間をあてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日に直されたものを暗記して、つぎの時間に暗唱することである。 ”(『古代への情熱』)

この方法は、シュリーマンが、「あらゆる言語をマスターする方法」として紹介しているものです。

彼の語学習得の最大の特徴は「音読」でした。

英語はスコットの「アイヴァンホー」を何度も、何度も、何度も繰り返し読んで暗唱できるほどまでになり、なんと半年でマスターしてしまいました。

しかも、これを大声でやります。

ロシア語を勉強しているとき、あまりに大きな声だったので住んでいたアパートを2度も追い出されたといいます。

ロシア語をマスターするにあたっては、こんなことも書いています。

“だれかにそばにいてもらって、その人に『テレマコスの冒険』を話して聞かせることができれば、進歩が早くなると思ったので、私は貧しいユダヤ人を一人、週四フランで雇い、ロシア語はひとこともわからないその男に、毎晩二時間私のところへ来させてロシア語の朗読を聞かせた。” (『古代への情熱』)

何とお金を払って言語を「教わる」のではなく、お金を払って言語を「教えた」というのです。

シュリーマンの大声の朗読を2時間も聞かされる、というユダヤ人が少し可哀そうになってきますが、これも、「教える」ということが「最も学習効果が高い」ということをシュリーマンが良くわかっていたことを物語るものだと言ってよいでしょう。

音読が良い、ということを東北大学の川島隆太教授が『脳と音読』(講談社現代新書)という本の中で裏づけています。

脳の活性化の比較

“読書と脳の関係を説明するために、読書をしているときの脳の働きを測定した研究結果について、簡単に紹介します。

文章を読むとき、私たちは普通、声には出しません。この黙読のときでも、脳の様々な部分が働きます。

面白いのは、黙読においても左右の側頭葉の「聴覚野」と呼ばれる部分が働いていることです。心の中では声に出して読んでいるわけですね。

では、音読の場合はどうでしょうか。図を見てください。

図の左側が左脳、右側が右脳です。

「単語を聞いているとき」、「黙読をしているとき」、「音読をしているとき」の脳の働きを比較しました。

音読をしているとき、非常に多くの脳の領域が活性化していることがわかると思います。

私は十数年脳機能イメージング研究を続けてきましたが、音読ほどに脳全体を活性化する作業を見たことがありません。

音読によって脳をたくさん活性化させると、何が起こるか?

それは「音読」を「運動」に、「脳」を「筋肉」に、「活性化」を「働かせる」に置き換えると見えてきます。

子どもの場合、運動によって筋肉をたくさん働かせてやれば、どんどんたくましい体を育てることができます。

その結果、将来、病気をしない健康な体、優れたスポーツ選手になることもできる体をつくることができます。

私たちも、毎日適切な筋肉を働かせる運動をおこなうことで、体の健康を保ち、老化を防ぐことができます。

すなわち、音読は脳の全身運動であり、脳機能を発達させ、脳機能の老化を防ぐことができるのです。

実際に、私は老年期痴呆症の方々に音読や計算を中心とする学習を一日二十分行ってもらうことによって、痴呆を改善することに成功しています。

単語記憶力テストの結果

音読が脳に与える効果は、「単語記憶力テスト」でも確かめられました。

このテストは、用意した単語を2分間でどれだけ覚えられるか、小学生10人にためしてもらったものです。

音読を続けたあとにテストすると、単語の記憶力が普段より20%以上もアップしていました。

これは、音読によって前頭前野がウォーミングアップして、いつもより活発に働いたからだと考えられます。 ”

(川島隆太『脳と音読』講談社現代新書)

英語の先生から音読の必要性は強調されていると思います。

英語に限らず、音読は学習効果の高い方法ですのでぜひ様々な教科の学習の中に取り入れていってください。

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