どんなことでもそうですが、本番の質を決定するのは、「どれだけ準備をしてきたか」ということです。
準備の大切さを伝える話として、史上初の南極点の到達を競ったイギリスのスコットとノルウェーのアムンゼンの話があります。
スコットはイギリス海軍のエリート軍人で、国威発揚をかけた南極地点到達プロジェクトのリーダーに選ばれました。
スコットは、エンジンのついた雪上車や、寒さに強い優秀な馬など、装備には最新のものを取りそろえ南極点到達を目指しました。
一方、アムンゼンは生粋の探検家でした。
探検家として成功するために日々体を鍛え、北カナダのイヌイットと生活をともにして、毛皮の作り方や、アザラシや魚の取り方と食べ方、イグルー(住居)の造り方等を一通り学びました。
スコットは、移動手段をエンジンつきの雪上車、馬、犬ぞりの3種類の混成部隊としました。
スコットは事前の計画が甘く、雪上車を修理する人間を連れて行っていなかったり、馬や犬用の食料が旅程分用意されていなかったりするなど、不十分なものでした。
結局は主力を馬にする予定だったので、馬が寒さでまったく約に立たず、その上、馬を維持するための馬草が膨大な荷物になっていて、これを運ぶために隊員が足止めされてしまいました。
また雪上車も、故障によってまったく役に立たず、最終的に人が重さ140キロのそりを引いて歩いていくという信じがたいほど悲惨な状況に陥りました。
一方、アムンゼンは犬ぞり一本に移動手段を絞りました。
イヌイットから情報を収集し、また極限下での訓練を繰り返すことで犬ぞりこそが寒さに最も強い移動手段であるという確信をもっていたからです。
さらにイヌの数は途中で随時殺してイヌのエサや隊員の食料にして、帰路の最後までに、ちょうど犬が最低限の数になるように計画していました。
その他の装備や食料などについても、スコットは配慮が足りませんでした。
防寒着については、アムンゼンが耐水性の良いアザラシの毛皮を採用したのに対して、スコットは耐水性のない牛革の防寒服を採用し、全員が凍傷にかかってしまいました。
また、スコット隊がビタミンC欠乏症から壊血病にかかったのに対し、アムンゼン隊は、イヌイットから学んだアザラシやペンギンの内臓を生で食べる方法でビタミンCを補い、壊血病にまったくかかりませんでした。
結果は、アムンゼンの方が、スコットより1ヶ月早くゴールに到達しました。
スコットがようやく南極点に到達したときには、イギリス隊は極限状態にありました。
スコット隊の帰路は、更に悲惨なものとなります。
隊員たちは、飢えと凍傷と壊血病に苦しめられ、全員が死亡するという最悪の結果となりました。
スコットが様々な起こりうる事態を想定していなかったのに対し、アムンゼンは何度も起こりうる事態を想定し、綿密に調査をし、計画を立て、準備しました。
さらに、アムンゼンは最悪の事態を想定したシミュレーションや訓練を繰り返しておこないました。
こうした準備の違いこそが、2人の勝敗を分けたのです。
この2人の南極地点到達の物語を知ると、事前の調査、計画、準備というものがいかに大切かということがわかります。