1.『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

時間泥棒たちから、主人公モモが人々の時間を取り戻す、というお話です。
時間泥棒は、人間の時間を食い物にして生きる存在で、人間が節約した時間を借りて生き永らえています。
ですから、時間泥棒は多くの人間に時間を節約させ、無駄な時間を過ごさないようにしてもらう必要があります。
例えば、時間泥棒が、理髪店の店主に言ったことは、
客と雑談しない
母の介護をしない(施設に入れる)
飲み会に行かない
インコを飼うのをやめる
読書をやめる
彼女と会う頻度を減らす
寝る前にぼうっとしない
といったことです。
そして時間泥棒は、言葉巧みに、人々が倹約した時間を盗み取ります。
人々はできるだけ短時間に、できるだけたくさんの仕事をこなそうとし、仕事を楽しむことや、誰かと一緒に過ごす時間を楽しむことや、一人の時間を楽しむことがなくなっていきます。
まるで時間に追い立てられて、常にイライラしながら生活している現代人のようです。
モモは時間泥棒から人々の時間を取り返し、人々に時間の意味を気がつかせるのです。
絶対に読んでほしいのは「時間の花」のシーンです。
このシーンは息をのむほど美しく、「時間とは命そのものである」ということを教えてくれます。
日常の中にある幸せを感じ取る気持ちを大切にしようと思える本です。
2.『歴史戦と思想戦』(山崎雅弘)

歴史というのは様々な光の当て方があって良いと思います。
1つの事実に対して、様々な評価の仕方があるのが歴史の面白い部分です。
ですが、「本当はあったこと」を「なかったことにする」のは絶対にいけません。
「従軍慰安婦はいなかった」
「南京虐殺はなかった」
「GHQが日本人を洗脳した」
こうした歴史観が世の中には蔓延していて、書店に行くと極端なほどに偏った歴史観の本や、近隣の国々に対する憎悪の感情をあらわにしたものが平積みされています。
この本はこうした歴史観がどのような意識に基づくものか、またこのように主張する論客たちがどのような手法(レトリック)で、「本当はあったこと」を「なかったことする」のかということを詳細に紹介しています。
歴史認識に関することについては、極論ばかりが取りざたされて、本質的な議論がなされないことは由々しい問題です。
まず、近隣の国々が日本を憎悪するように仕向けるのは、自国の政府の正統性を高めたり、政権に対する国内の不満をそらすための政治的な手法であるということを知らなければなりません。
多くの場合、民族対立や、国家同士の対立というものは「政治的な意図によって作り出されたもの」です。
誰が、どのような意図のもとで対立を作り出すのかということを正しく知らないと、極端で扇情的な論調に簡単にだまされてしまいます。
自分の国の歴史を卑下したり、あるいは誇大に評価することがないようにも、この本を読んで歴史を勉強してください。
3.『旧約聖書を知っていますか』(阿刀田高)

史上最も読まれた本が聖書です。
国際聖書協会によると、1815年 から1998年の間だけで推定約3880億冊発行されています。
2000年の1年間だけでも世界中の聖書協会によって約6億3300万冊が発行されました。
特にキリスト教で『旧約聖書』と呼んでいる部分は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のどれもが共通して採用している書物であり、人類の半数以上が読んでいて、人類の思想に大きな影響を与えている書物です。
西洋思想の源流に聖書があり、多くの人々にとって共通の土台にあたる文化であると言って過言でないでしょう。
大学で学問をする上で、欠かすことができない教養です。
文学、歴史、思想などの人文科学を勉強していく際に聖書の知識は不可欠ですし、西洋絵画を鑑賞する上でも聖書の知識がなければ「何を描いているのか」「どのように素晴らしいのか」ということを理解することもできません。
かといって、最初から分厚い聖書を手に取るのは気が引けるという人に、最初に聖書を読む際の手がかりとなるのが本書です。
筆者の阿刀田高さんの語り口が非常に軽妙で、読みやすいです。
現代人にとって非常にわかりやすい身近な話などを引き合いに出しながら語ってくれます。
姉妹編の『新約聖書を知っていますか』、『ギリシア神話を知っていますか』とセットで読むと西洋文化に対する理解を深めることができます。