1.ケネディ 神話と実像

本書はサブタイトルの「神話と実像」にもあるように、一般に知られているケネディのイメージとは違うケネディの実像に迫っている。
ケネディは、差別のない社会、宇宙開発、核軍縮、ソ連との協調などアメリカが目指す新しいフロンティアを語り、理想を追い求めながら暗殺された大統領として神話化されている。
ところが、多くの人に夢を語ったケネディは、優秀な兄に対する劣等感を強く抱き、少年時代は自分自身の夢も思い描けないような状況だった。
また、健康的なイメージのケネディは、実は幼少期から数多くの病気にさいなまれていた。
ケネディの母ローズが「息子は病気の百貨店」だったと話しているように、過敏性大腸炎、十二指腸潰瘍、前立腺炎、アジソン病などで、恒常的な腹痛、排尿障害、腰痛に悩まされていた。
ケネディの運命を大きく変えたのは、兄の死であった。
父が兄に期待をかけていたため、ケネディは政界へ入ることなど想像したこともなかったのに、第二次世界大戦で兄が戦死し、一方自身は戦争で英雄となって、成り行きで選挙に出ることとなり、政治家への道を歩んでいくのである。
また、上院議員時代の入院中に執筆した、自らが理想とする政治家たちを紹介した『勇気ある人々』がピュリツァー賞を受賞し、それをきっかけに自らの使命を悟り、理想を実現するために積極的に人生を歩むようになっていく。
授業では紹介しきれないほどの様々なエピソードが散りばめられている本である。
ハンデを負った少年が大統領となった軌跡や、時代を問わず人々を惹きつける演説に勇気づけられることは間違いない。
2.大気を変える錬金術

様々な教科が相互につながっていることを知ることは勉強することの醍醐味の一つである。
たとえば、化学で勉強するアンモニアの合成(N2 + 3H2 → 2NH3)の式は、歴史を大きく動かした式である。
この本で紹介されているドイツの科学者ハーバーは、空気中の窒素からアンモニアを合成することに成功した。
これにより、窒素肥料の大量生産による食料の増産が可能になった。第一次世界大戦の開戦直前、食糧の増産が叫ばれる中でハーバーは「空気からパンを作った男」と言われて称賛された。
一方、アンモニアの合成により火薬の原料となる窒素化合物の生産が可能となった。
この方法が発明されたことで、無尽蔵に火薬を生産することが可能になり、第一次世界大戦では多くの人の命が奪われた。
また、ハーバーは毒ガス開発を推進したことでも多くの人命を奪い、戦争が終わった後にその批判を一身に浴びることとなった。
この本を読むと、化学の発展が歴史を大きく動かしてきたことや、化学は人間に生命を与え、一方では奪いもするということを理解することができる。
すべての学問がつながっているということを実感するためにぜひ一読してもらいたい本である。