
脳科学者の池谷祐二氏は記憶のメカニズムについて、以下のように述べている。
”私は海馬の専門家なんですが、なかでもCA3という場所の専門なんです。
CA3は、昼間に情報を集めます。
保管場所は大脳皮質。
このCA3で、睡眠中、それもとくに深い眠りのときに、すごくおもしろいことが起こるんですよ。
それはですね、情報の圧縮です。
ネズミの実験の話がもっともわかりやすいので、それで説明します。
実験で、ネズミを歩かせます。
ある場所に行ったときに特定のニューロンが活動します。
「場所A」のニューロンは「場所A」に行ったときにだけ活動する。
「場所B」のニューロンは「場所B」だけで活動する。そういうしくみになっています。
ですから、研究者はネズミを見ていなくても、海馬から記録されるニューロンの電気信号をモニターで見ているだけでネズミがどこをどう歩いているかわかります。
起きてるあいだ、ネズミに同じ経路をA→B→C→D、A→B→C→Dと何度も歩かせます。
そうするとモニターでもA→B→C→D、A→B→C→Dと出ます。
その直後、ネズミを寝かせます。
すると、眠りの浅いとき、つまり夢をみているときに、ちゃんとA→B→C→D、A→B→C→Dって、ニューロンが活動するんですよ。
起きていたときと同じ順番で、です。
おそらく、A→B→C→Dの夢を見てるんでしょう。
夢の中で、寝ながらA→B→C→D、A→B→C→Dを体験します。
では、眠りの深いときには、脳ではいったい何が起こっているのでしょうか。
それはですね、やっぱりA→B→C→Dを再生しますが、ものすごい早送りでやるんです。
最速で100倍以上の速さになります。それが、深い眠りで海馬のCA3がやっていることなんです。
CA3が、記憶を圧縮するんです。
圧縮すると、今度はそれが大脳皮質に戻ります。
リップルと呼ばれる、大脳皮質に届く脳波が出て、情報が大脳皮質に戻り、保管されます。
さきほどのネズミの歩行実験の話でお伝えしたように、 昼間起きている間に起こったことが、次の睡眠中に再現されます。
再現される確率は、寝入りの時間に近ければ近いものほど高いんですよ。
そして、再現されたものの記憶の定着も、寝入り直前の経験のほうが、いいんです。夢では、時間をさかのぼっては、あまり思い出せないようです。
ですから、睡眠を使ってものを覚えようという企みを持っている人は(笑)、覚えたいことを、朝にやるんじゃなくて、睡眠直前にやるほうがいいんです。”
(脳科学者の池谷祐二氏の文章より抜粋)
“脳が記憶をするメカニズム” への1件のフィードバック