正解の出ない問題を追究することの意義

慶應義塾大学文学部の2021年度の問題が「正解の出ない問題を追究することの意義についてあなたの考えを400字以内で述べなさい」というものでした。

この問いを見た際に、自分は大学生の時に読んだE.H.カーの『歴史とは何か』を思い出しました。

歴史学についての古典的な名著です。

この本の中で、カーは「すべての歴史は現代史である」という言葉を紹介し、歴史家が過去の出来事を選択、評価する際には、必ず現在の視点が反映されると述べています。

歴史的な事実というものは変化しませんが、歴史的な事実を解釈する視点は、歴史家が生きる現代の状況によって常に変わりうるものである、ということです。

これは大変興味深い視点で、歴史上の1つの出来事の意義、人物の業績というものはその歴史家が生きた時代に応じて変化するということです。

また、我々の生きる現代という時代の文脈に応じて、無限に解釈が可能ということを意味します。

こうした考えを踏まえ、E.H.カーは、「歴史とは歴史家と事実との相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話である」と結論づけています。

現在起こっている問題から、1つの歴史をどのように解釈し、評価するのか。

無限に問い続けることができる対象であるからこそ、歴史は奥深いのだ、ということをこの本は教えてくれました。

歴史は、過去に生きた人々の世界であり、そこから自分自身の生き方や、社会のあり方を問うことができます。

「どのように生きるべきか」、「社会はどうあるべきか」といった問いに簡単に答えが出ることはありませんが、歴史を通じて思索を深め、内省を繰り返すことが生き方を変え、社会を変えていく原動力になっていくのです。

大学の入試問題は、近年、受験生の問題意識を問う、という性質のものが増えてきつつあります。

いかに効率よく覚えるか、どのようにしたら解答を早く出すことができるか、というタイプの学習をしてきた人には太刀打ちできない問題です。

本質を問う問題によって、テクニックやパターンばかりを覚えてきた受験生を排除しようとしています。

普段の授業、また英語や現代文、古文などで出会った文章から、自らの興味・関心を持ったことを思索し、考える習慣をつけるような姿勢を持つことが何よりも大切です。

入試問題は、大学で学ぶ準備ができているかどうかを問うものです。

「受験のための勉強」という姿勢で学んでいる人は、合格できません。

「受験勉強を通じて学ぶ」ことから、大学で学ぶ準備をしていきましょう。

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