
大変面白い本でした。
現代の文化は心と体を別物として扱ってきましたが、最新の研究では心と体は密接なつながりがあるということがわかっています。
特に興味深いのが、運動が脳の機能を向上させるのに非常に大きな役割を果たしているということです。
受験生は運動不足になってしまいますが、実は脳の機能を向上させなければならない受験生にとって運動は必要不可欠なのです。
この本では、アメリカのシカゴにあるネーパーヴィルセントラル高校で行われた実験が紹介されています。
その実験ではネーパーヴィル203学区の学生1万9千人を対象に、1時限目の前の0時限目として、体操やランニング、ダンスなどの有酸素運動の授業を受けさせました。
平均心拍数が185を超える高強度の運動による成績への効果を、体育教師のグループが調査したのです。
その結果、ネーパーヴィル203学区の生徒は全国で最も健康的に、成績も目覚ましく向上しました。
運動が脳にとっての刺激となり、学習能力を高めることが分かったのです。
0時限目の授業に出た生徒の成績は、リーディング力と理解力において17%向上したのです。
また、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)という世界中の学生に対して行われている国際比較教育調査では、ネーパーヴィルの学生が理科で世界第1位、数学で第6位の成績を収めました。
ちなみに、ネーパーヴィルの優秀な生徒のみを選抜してテストを受験させたわけではなく、8年生の97%が同テストに参加しました。
アメリカ全生徒の平均値が理科第18位、数学第19位だったことからも、ネーパーヴィルの成績が運動によって大きく向上したと言えるでしょう。
では、なぜ運動によって脳が鍛えられるのでしょうか。
運動すると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が脳の中でさかんに分泌されるからです。
すでに、このBDNFが、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管の形成を促すことが明らかになっています。
BDNFは肥料のようなもので、ニューロンが新しい枝を伸ばし、学習に必要な脳の成長を促します。
すなわち、BDNFは脳のネットワークの道路工事の役割を担っているのです。
運動によって、脳は網の目状のネットワークを広げ、さらに他の神経と接続して発達していくのです。
以前は「脳のニューロンの数は生まれたときに決まっており、その後は加齢とともに減っていく一方で、増えることはない」と考えられていました。
ところが最近では、さまざまな要因で後天的に増えることが科学的な常識となっています。
そして、ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのが、運動なのです。
また、有酸素運動によるトレーニングを行うことで、記憶をつかさどる海馬が大きくなることがわかっています。
脳科学の先進的な研究を行っているカリフォルニア州ソーク研究所のプレイグ博士は、運動させたマウスほど、海馬が発達することを実験によって明らかにしました。
プレイグはマウス用のプールに水をはって足場を置きます。
水が嫌いなマウスが、逃げ道となる足場の位置をどれくらい正確に覚えているかを、おとなしくさせていたマウスのグループと、回し車で毎晩4~5km走らせたマウスで比較しました。
すると、運動していないグループはさんざんもがいた末にようやく足場を見つけ出し、プールを渡ったに対して、運動しているマウスが足場に直行してスムーズにプールを渡ったのです。
解剖してみると、運動しているマウスの海馬にあった新しい幹細胞は、運動していないマウスの、なんと2倍にものぼるということがわかったのです。
さらに、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す効果も、運動にはあります。
ドーパミンの分泌はモチベーションを向上させ、セロトニンの分泌は、イライラや怒り、衝動性が改善されて感情や気分を安定させ、ノルアドレナリンの分泌によってストレスは経験されるのです。
運動することによって勉強の効率を上げられるというのは、実感として理解できる人も多いのではないでしょうか。
勉強の効率を上げるために、運動の習慣をつけましょう。
運動も筋トレよりも、ダンスやジョギングなどの有酸素運動の方が脳の機能を活性化させることがわかっています。
毎日5~10分でも良いのでダンスやジョギングなどの有酸素運動を習慣化しましょう。