慶應法学部世界史のサンプル問題を解説

慶應法学部が世界史のサンプル問題を発表しました。

https://www.keio.ac.jp/ja/admissions/examinations/changes/

慶應の法学部は2025年度から、地歴の時間が60分→90分に増加して、さらに得点も100点から150点に増加します。

英語200点、地歴100点、小論文100点から、英語200点、地歴150点、小論文100点となるため、地歴が重視される配点となります。

地歴は時間が30分増加することから論述が出題されるのではないか、と言われてきましたが、サンプル問題から論述が出題されることは確実となりました。

問題は以下のようなものです。

綿花の最古の栽培地には諸説あり、インドはその有力な地域の一つである。「世界の一体化」 以後、 インド産綿織物はヨーロッパでキャラコ、日本では江戸時代に桟留縞・べんがら縞などの呼称で流行した。イギリス東インド会社が現地政権の許可を得て商館を設け、綿織物を本国へ大量に送ったため、インドは大量の銀の流通によって繁栄した。

現代において綿花の産出世界一は中国であり、その生産の多くを担うのは新疆地方である。 マルコ=ポーロは 『世界の記述 (東方見聞録)』 において、綿花の栽培を行うオアシス都市について報告している。中国歴代王朝では、綿花栽培は殊に明代の農業で重視され、 綿製品は19世紀に至るまで、 巨大な国内市場向けに供給される一方、欧米にもその一部が輸出された。18世紀半ば、貿易は一港に限られ、外国人商人やその家族はマカオに居住させられるなどの厳格な管理体制が敷かれた。

イギリスは、綿製品の「輸入代替」 を試み、1820年頃にはインドとイギリスの綿布輸出額を逆転させた。また現地の動乱に乗じて、古来より高級綿製品の産地であったベンガル地方の支配を固め、在来綿業を抑圧した。一方、イギリス製綿製品は、大量生産を実現したが、中国との貿易では、茶による輸入超過を補うほどには売れなかった。そのため、イギリスは代わりにインド産アヘンを輸出し、清の政治・経済・社会に打撃を与えた。

[設問]

下線部に関連して、インドはその後、イギリスの直接統治下に置かれるなど、この時代にはヨーロッパ諸勢力による南アジア・東南アジアの植民地化が進行するが、 宗主国は現地の産業構造をどのように変化させたか。インドにおけるイギリス、ジャワにおけるオランダ、フィリピンにおけるスペインを例として触れながら、共通する現象を説明しなさい。 (300字以内)

サンプル問題に解答・解説がついていないため、当方で解答のポイントと、解答例をまとめました。

解答のポイント

1.産業構造の変化(共通する現象)

①(変化前)伝統的手工業や、自給自足的な農業

②(変化後)ヨーロッパの工業製品の市場とされ、製品流入により伝統的手工業は破壊

③(変化後)原料供給地に位置づけられ、農民の組織化により商品作物の栽培

2.イギリス領インド

④イギリスの機械制綿布の原料となる綿花を栽培

⑤中国茶の代替として、アッサムや、セイロンでの茶の栽培

3.オランダ領ジャワ

⑥コーヒーやサトウキビ・藍などの商品作物の強制栽培制度を導入

4.スペイン領フィリピン

⑦マニラが開港された後、サトウキビ・マニラ麻・タバコなどの商品作物の生産が広がった

解答例

産業構造の変化として共通に見られるのは、伝統的手工業や、自給自足的な農業が中心であったが、植民地化によりヨーロッパの工業製品の市場とされ、製品流入により伝統的手工業は破壊されたことである。また、原料供給地に位置づけられ、農民の組織化により商品作物の栽培が行われた。イギリス領インドでは、イギリスの機械制綿布の原料となる綿花が栽培された。また、中国茶の代替として、アッサムや、セイロンで茶の栽培が行われた。オランダ領ジャワでは、コーヒーやサトウキビ・藍などの商品作物の強制栽培制度が導入された。スペイン領フィリピンでは、マニラが開港された後、サトウキビ・マニラ麻・タバコなどの商品作物の生産が広がった。(300字)

問題の講評

桟留縞(さんとめ)のことが出ていて、昨年度との問題の連続性を感じました。

「宗主国は現地の産業構造をどのように変化させたか。」という視点は大変素晴らしい良問です。

歴史総合の近代化、大衆化、グローバル化のうち、近代化やグローバル化の視点を意識した問題と言えます。

最大の対策はしっかり教科書を読み込むことでしょう。

例えば、山川の詳説世界史探究の教科書にヒントになる記述はたくさんあります。

P249

19世紀に入ると、オランダ支配に対する大規模な反乱(ジャワ戦争)がおこり、その鎮圧で本国の財政状況が悪化した。オランダはその立て直しのために、コーヒーやサトウキビ・藍などの商品作物の強制栽培制度を導入し、莫大な利益をあげた。

P250

19世紀に入って自由貿易を求める圧力が強まると、スペイン本国はそれまでの閉鎖的な植民地政策を転換し、1834年にはマニラを各国に開港した。プランテーションでサトウキビ・マニラ麻・タバコなどの商品作物の生産が広がり、フィリピンは世界市場に組み込まれることとなった。

P274

また、プランテーション※における世界市場向けのコーヒーや茶などの生産や、綿花などの工業原料作物の生産も広がり、インドはイギリスを中心とした世界的な経済体制のなかに組み込まれていった。

※南インドではコーヒーが、インド島北部のアッサム地方やセイロン島などでは茶が栽培された。

ライバルの早稲田の法学部も300字の世界史論述を出題することで有名ですが、これで早稲田も慶應も法学部は300字の論述が出題されることになります。

上智のTEAP方式でも200字+300字程度の字数を書かせる問題を出題するため、早慶上智を視野に受験する生徒は普段から論述を意識した学習は必須となるでしょう。

ただ、論述といっても特別な対策を立てるというわけではなく、やることは教科書の確実なマスターです。

山川出版社の『詳説世界史書き込み教科書』が教科書の知識を習得するのに最適な問題集であると考えています。

空欄の前後だけでなく、文章全体をしっかり理解しながら進めていくことで確実に教科書の内容を習得することができます。

ただ、教科書は抽象度が高くて最初に教科書から入ろうとすると確実に挫折します。

まずは、松山の世界史チャンネルYouTubeを利用してください。

教科書の内容をエピソード盛りだくさんで具体化しながら紹介しています。

https://www.youtube.com/channel/UC8R78CtUj0uQOUM2wx-H1-A

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