1.文学部の逆襲

来週水曜日から読書週間ですので、知的好奇心を触発してくれる本の紹介をしていきます。
この本で力説されているのは、物語の重要性です。
今後の社会においては、生活や生産活動において何ができるかを物理的に規定するテクノロジーよりも、「どのような世の中が望ましいのか」、「どのような生活と人生を送りたいのか」、「何が善で何が悪なのか」といった世の中のあるべき姿を描き出す「大きな物語」こそが重要になると位置づけています。
AIによって労働から解放された社会は、かつて古代ギリシアにおいて、経済活動を奴隷が担い、市民が労働から解放されていたことと前提条件が共通しているため、人々は知的活動や創作活動、真善美を追求する文化的な活動に専念できるようになります。
現在、「資本の奴隷」に位置づけられた人々が、文化的な活動によって人間性を回復していく世界が、今後の新しい歴史のステージになる、と説くのです。
この本は、哲学、文学、歴史といった人間らしさに関わる領域を研究する文学部が復権し、人文分野の研究者の想像力によって描き出される物語が、新たな社会を動かす現実的な力になる可能性を示唆しています。
大学で人文科学を学んでみたい人にとっては知的な興奮が味わえる本です。
2.プーチンの実像

冷戦の崩壊後、かつて同盟国だった国々に次々に裏切られたことがプーチンのNATOへの不信感となり、ウクライナへの侵攻に踏み切った動機の一つです。
この本の中で非常に興味深かったことは、プーチンのKGB時代までさかのぼって、NATOに対してどのような考え方を持っているのかという証言を紹介していることです。
プーチンがソ連のスパイKGBの出身であることはよく知られていますが、その任務が何だったかということについてはあまり知られていません。
プーチンはKGB時代、東ドイツに滞在し、NATOの動向を探ることを任務としていました。
この本で様々な証言に触れると、プーチンのNATO批判は今に始まった事ではなく、プーチン自身のキャリア、アイデンティティに関わる話であるということがわかります。
他にも、東欧諸国に裏切られた、という不信感が、北方領土問題を未解決にする要因になっていることがわかる証言など、プーチン自身やプーチンと接した人々の証言を数多く紹介していて、その実像に迫っています。
なぜ今、ロシアはウクライナに侵攻しているのかという実情を知ることができますので、ぜひ読んでみてください。