『23分間の奇跡』は鳥肌モノの怖さ

『23分間の奇跡』(ジェームズ=クラベル)という作品があります。

とても怖い話なのですが、あらすじを紹介します。

戦争に敗れ、占領されたどこかの国のある学校の教室に、新任の若い女性の教師がやってきます。

白髪頭になるまで独身で教育に身を捧げてきた厳格な女性教師は、その日からクラスの担任になった新しい教師から校長室へ行くよう言われ、万感の思いを込めて「みなさん、さようなら」と告げ、泣きながら教室を出て行きました。

時刻はちょうど9時。

新しい教師は、学校に来る前にあらかじめクラスの生徒の席の場所と名前を全て暗記していたり、頭ごなしに命令をせず、意味を考えさせ、理解させた上でやらせたり、何より、生徒の意見は、全て受け止め、決して否定しませんでした。

最初は新しい教師に不信と反感を抱いていた子供たちも、歌やゲームを通じて次第に新しい教師と打ち解けていきます。

「国旗への忠誠の誓い」を巡るやり取りの中で、教師は子供たちが誰ひとりとして「忠誠」という言葉の意味を理解していないことを指摘します。

教師は、愛国心に国旗は不要であることを子供たちに教え、国旗をはさみで切り刻んで子供たちに配ります。

さらには旗竿だけとなった国旗を、子供たちに学校の窓から投げ捨てさせました。

戦争に負け、自分の父親が連れ去られたことで新任の教師に反感を抱いていたジョニーが不満をぶちまけると、教師は「ジョニーの父親は『間違った考え』を抱いていたために大人のための学校へ行っているのだ」と教え諭します。

「間違った考え」を直すことは良いことだ、という女教師の意見に反論できず、ジョニーは釈然としないながらも引き下がりました。

次に教師は「キャンディーが欲しい」と神様に祈るように、と子供たちに試させました。

ところが、キャンディーは出てきません。

次に神様の代わりに自分たちの国の新しい指導者様に祈るように指示し、子供たちに目を閉じさせている隙に、教師がキャンディーを配ります。

ジョニーは、みんなが目を閉じている隙に教師がキャンディーを配ったことに気付き、「先生が配ったんだ」ということをみんなに教えてしまいます。

ところが、教師は逆にジョニーがとても賢い子であることを褒め、キャンディーをくれるのは神や指導者ではなく、先生や他の人たちであるということを子供たちに教えました。

教師から褒めちぎられて、クラスのみんなからも称えられたジョニーはいい気分になってしまい、さらに教師から頼まれて、クラスの代表を引き受けることになりました。

これにより最後まで抗っていたジョニーも、教師の言葉はどれも真実であると考え、彼女の言うことを聞いてよく勉強し、「間違った考え」を抱かないようになろうと決めました。

この頃には、子供たちの間に教師の言うことを受け入れる雰囲気が広まっており、自分の教えた思想を子供たちがほぼ受け入れたことに満足した教師が時計を見ると、時刻は9時23分でした。

以上。

えーっ!?全然怖くないじゃないですか!!

という声が聞こえてきそうですね。

いやいや、世界史の中でもあった、怖いお話なんです。

「世にも奇妙な物語」で映像化されていて、YouTubeでも観られるようです。

この話のどこが恐ろしいのか、という解説を次回していきます。

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